アクアリウムで水道水のカルキを抜く理由【仕組みや抜き方を紹介】

アクアリウムで水道水のカルキを抜く理由【仕組みや抜き方を紹介】

アクアリウムに使う水道水からはカルキを抜く。もはや常識となっています。

しかし、なぜカルキを抜かないといけないのかという理由まで知っている人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、なぜアクアリウムに使う水道水からはカルキを抜かないといけないのかという理由や、カルキの抜き方を紹介します。アクアリウム

そもそもカルキとは

そもそもカルキとは何なのでしょうか。

カルキとは、水道水に入っている消毒剤のことです。一般的にはカルキは「塩素」だと思われていることが多いですが、正式には「次亜塩素酸カルシウム」と言います。

カルキ(塩素)は、病原菌などに対しては消毒効果がありますが、人間に対しては影響がありません。

例えば、WHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインでは、生涯にわたって水道水を飲み続けても健康に影響が生じない塩素濃度を5mg/Lとしています。

一方、東京都水道局の残留塩素濃度は、日本の水道法で定められている0.1mg/L以上を守りつつ、水道から出てくる水の実際の塩素濃度を、独自の水質管理目標値である1mg/L以下になるよう管理しています。

このように、カルキは水道水の消毒を行うためのもので、人体に影響はありません。

参考:よくある質問|東京都水道局

アクアリウムで使う水道水からカルキを抜く理由

さて、水道水のカルキは人体には問題ないと紹介しました。しかし、アクアリウムに使う自らはカルキを抜く必要があります。

それは次の理由からです。

  • カルキは魚に有害
  • カルキはバクテリアにも有害

1つずつ解説します。

カルキは魚に有害

カルキは人体には影響がありませんが、魚にとっては有害にな物質です。

カルキは消毒をするための物質なので、刺激性があります。そのため、魚のエラや粘膜を傷つけてしまいます。

エラがカルキで傷つくと、魚は息ができなくなってしまいます。また、粘膜が傷つけられると、身体を保護する成分がなくなり、病気になりやすくなってしまいます。

魚の身体を傷つけないために、カルキ抜きは必要なのです。

カルキはバクテリアにも有害

カルキ抜きは、水槽内の水質を安定化させるバクテリアにも悪影響があります。

水槽内には、魚の排泄物に含まれる有害な「アンモニア」というを「亜硝酸」「硝酸」という物質に変えてくれるバクテリアが生息しています。

バクテリアがアンモニアを分解してくれる過程を「生物ろ過」と言います。生物ろ過が機能していないと、水槽内にアンモニアが増えすぎて、魚が死んでしまいます。

「生物ろ過」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています

アクアリウムにおいてバクテリアは非常に重要な存在ですが、カルキはこのバクテリアを殺してしまいます。

カルキ入りの水道水は、水槽内のろ過循環を壊してしまうのです。

魚とバクテリアを守るためにカルキ抜きは必要

このように、魚とバクテリアをカルキから守るために、アクアリウムに水道水を使う際はカルキを抜かないければなりません。

アクアリウムで使う水からカルキを抜く方法

ここからは、水道水からカルキを抜く方法を紹介します。代表的なカルキを抜く方法は、次の3パターンです。

  • カルキ抜き剤を使う(最もオススメ)
  • 汲み置きをする
  • 煮沸する

1つずつやり方を紹介します。

カルキ抜き剤を使う

最もオススメな方法は、カルキ抜き剤を使うことです。

便利なカルキ抜き剤

カルキ抜き剤は、カルキ(次亜塩素酸ナトリウム)を中和する「チオ硫酸ナトリウム」という物質からできています。(化学反応式は難しいので割愛します)

カルキ抜きを使えば、確実に水道水中のカルキを抜くことができます。また、最も即効性のある方法なので、ほとんどのアクアリウム愛好家はカルキ抜き剤を使っています。

カルキ抜き剤を入れすぎたらどうなる?

カルキを抜くカルキ抜き剤ですが、もし規定量より入れすぎてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。

結論から言うと、それほど気にする必要はありません。

カルキが残っていれば問題ですが、カルキ抜き剤が多少多く入っていても、魚やバクテリアに大きな影響はありません。

ただし、水を入れるたびに毎回入れすぎることは、魚の体調不良につながります。また、あまりにも多量に入れすぎた場合も、その水は使わずに新しく用意した方が良いでしょう。

汲み置きをする

水道水を汲み置き

水道水を汲み置きをする方法でもカルキは抜けます。水道水を放置しておくと、水中のカルキは蒸発していきます。

この方法は時間がかかりますが、お金はかかりません。水槽を立ち上げた後、時間に余裕がある場合には試してみてもいいでしょう。

カルキが抜けるまでの時間

カルキが抜けるまでの時間は気温や水の量などの環境で変化するので注意が必要です。

太陽光があたっている屋外の場合、半日以上たてばほとんどのカルキは抜けると言われています。

一方、室内の場合は、少なくとも3日以上は放置する必要があります。また、蓋をしておくとカルキの抜けが悪くなります。室内で蓋をしないで3日以上放置すると、水をこぼす危険もあるので気をつけてください。

煮沸する

煮沸しても、カルキは抜けます。水道水が沸騰した後もしばらく過熱を続けると、カルキが他の物質へと変化して、やがて水中からカルキがなくなります。

この場合、煮沸後の水の温度には注意しましょう。「水を加えて冷ます」なんてことはできないので(カルキが入ります)、自然に冷めるのを待ちます。

元からカルキが入っていない水を使うのはアリなのか

さて、水道水からカルキを抜く方法について紹介してきましたか、元からカルキが入っていない水をアクアリウムに使うのはアリなのでしょうか。

「カルキ抜きの水」というと、「川や池、湖の水」「水路の水」「ミネラルウォーター」等、いくつか候補が思い浮かびます。しかし、結論から言うとこれらはアクアリウムに使わない方がいいです。

ここからは、それぞれ何故アクアリウムに使わない方がいいのかを解説します。

川や池、湖の水

川や池、湖の水をアクアリウムに使うと、意図しない生物が水槽内で繁殖することがあります。

また、魚に悪影響を与える寄生虫などを水槽内に持ち込む原因にもなります。

水路の水

水路の水には、洗剤などの人工物が混ざっていることがあります。また、農業用水の場合は農薬が混ざっている場合もあります。

水路には魚が生息していることもありますが、それは絶えず新しい水が流れてきているからです。水路の水が水槽内で滞留すると、魚にとってダメージとなることもあります。

ミネラルウォーター

ミネラルウォーターにはカルキが入っていません。そのため、一見アクアリウム向きに思えるのですが、実はミネラルウォーターはアクアリウムには向いていません。

その理由は、ミネラルウォーターの硬度です。

硬度とは、水1Lあたりのカルシウムとマグネシウム(いわゆるミネラル)の含有量のことです。ミネラルが多いほど、硬度は高くなります。ミネラルウォーターはその名の通り、硬度が高いものが多いです。

一般的に、観賞魚は硬度の高くない水を好んでいます。そのため、ミネラルウォーターをアクアリウム用に使うことはオススメできません。

カルキ抜き剤でカルキを抜いた水道水を使おう

この記事では、アクアリウムで水道水のカルキを抜く理由について説明してきました。

カルキは魚や水質を維持するバクテリアにとって有害なので、必ず抜くようにしましょう。

また、水道水からカルキを抜く方法は、カルキ抜き剤が最もオススメです。

アクアリウムでは、一度に何10Lもの水を使います。そのくらいの量の水を汲み置きしたり煮沸したりするのは、現実的ではありません。

そのため、アクアリウムではカルキ抜き剤が重宝されているのです。

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