アクアリウムのろ過(濾過)システムの仕組みを解説!水槽を立ち上げる前に必要な知識

アクアリウムのろ過(濾過)システムの仕組みを解説!水槽を立ち上げる前に必要な知識

アクアリウムをする人なら誰しもが、水槽が汚くなってしまったり、生体がすぐに死んでしまったりした経験があるのではないでしょうか。

アクアリウムの管理が上手くできず、生体が死んでしまうと、アクアリウムに対する自信がなくなってしまいますよね。

そんな人にオススメなのが、「ろ過」に対する知識を勉強することです。アクアリウムにおいてろ過は最重要な知識であり、生体を上手に飼育するために必須の知識です。

この記事では、水槽を立ち上げる前に知っておきたいろ過の仕組みを解説します。

合わせ読みたい>>水質悪化の仕組みをメダカのプロが解説!アクアリウムにおける水質管理とは

ろ過(濾過)とは?

そもそも、ろ過(濾過)とは何なのでしょうか。

一般的なろ過

ろ過とは、一般的には「液体や個体、気体の中から不純物を取り除くこと」を指します。

学校の実験で、汚れた水をろ紙でこし取った経験がある方も多いでしょう。一般的には、ろ過とは「水を綺麗にする」イメージで使われます。

アクアリウムにおけるろ過

一方、アクアリウムにおけるろ過とは、「水槽内の水を綺麗に保つこと」「水槽内の水質を生物がすめる状態に維持すること」を指します。一番大きな目的は「水槽内に生物が住める環境を作ること」です。

たとえ見た目が汚くても(緑色になっていても)、生物が住める環境であればアクアリウムにおけるろ過には成功しています。

アクアリウムにろ過が必要な理由

さて、海や川にはろ過器は設置されていませんが、水はきれいです。魚は元気に生きています。

しかし、もしアクアリウム水槽にろ過器がなければ、水槽はすぐに汚れてしまい、生体は死んでしまいます。

なぜ、アクアリウム水槽にはろ過が必要なのでしょうか。

ろ過によって水槽内に自然界を再現

アクアリウム水槽にろ過が必要な理由は、自然界を再現するためです。

実は、自然界では自然のろ過器が機能しています。

海や川の水も、生き物の排泄物や死骸などの有機物で汚れていきます。

しかし、自然界のろ過機能が上手く働いているので、海や川の水はきれいに保たれているのです。

水槽内で生物を飼うためには、この自然界のろ過機能を再現する必要があります。

水中のろ過循環

それでは、具体的には水槽内にどのようなろ過循環を再現すればいいのでしょうか。

まずは、ろ過循環とはどのような循環なのか紹介します。

自然界も水槽内も、基本的には次のような流れになっています。

  1. 魚がエサを食べる
  2. 魚が排せつ物(糞尿)を出す
  3. バクテリアが糞尿のアンモニアを亜硝酸塩に変える
  4. バクテリアが亜硝酸を硝酸塩に変える
  5. 硝酸塩を水草が養分として吸う
  6. 水草が酸素を出す

図で表すと次のようになります。

アクアリウムにおけるろ過の説明

自然界では、この流れが循環しています。アクアリウムでも、水槽内でこの循環を再現する必要があります。

水槽内でろ過循環(窒素循環)を人工的に再現する

水中のろ過のポイントは、毒性のあるアンモニア、亜硝酸、硝酸を無毒化していくことです。

このアンモニアが亜硝酸、硝酸と変わっていくことを、「窒素循環」と言います。自然界では、常に窒素循環が行われています。そのため、魚などの生物は生きていられるのです。

しかし、水槽内では窒素循環が起きません。放置すると、有毒なアンモニアが水槽内にどんどん増え、やがて生体は死んでしまいます。

そのため、アクアリウムでは、この窒素循環を人工的に再現することが必要なのです。また、水槽内においては、アンモニアの元となる有機物(食べ残しや死骸、フンなど)を掃除すること等も重要です。

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アクアリウムのろ過の種類

水中のろ過のポイントは、毒性のあるアンモニア、亜硝酸、硝酸を無毒化していくことであると紹介しました。

アンモニアなどを無毒化するためのろ過には、大きく分けて3種類あります。

  1. 物理ろ過
  2. 化学ろ過
  3. 生物ろ過

水槽内の水質を保つためには、それぞれのろ過を活用する必要があります。ここからは、それぞれのろ過について解説します。

物理ろ過

物理ろ過は、アンモニアの元となる有機物(食べ残しや死骸、フンなど)を物理的に取り除くろ過です。

物理ろ過は、ろ過機のフィルター等で行います。また、エサの食べ残しや死骸、フンを人の手で除去することも物理ろ過の一種です。

アクアリウムの物理ろ過の説明
物理ろ過では有機物を取り除く

化学ろ過

化学ろ過は、吸着ろ過とも呼ばれ、有機物や有害物質を化学原理にもとづいて吸着するろ過です。

例えば化学ろ過では、物理ろ過では取り除けなかった小さな有機物を活性炭やゼオライトなどで吸着します。また、アンモニアなどを吸着する素材を使って、生物ろ過の補助をすることもあります。

化学ろ過(吸着ろ過)は、物理ろ過と生物ろ過を補助
化学ろ過(吸着ろ過)は、物理ろ過と生物ろ過を補助

生物ろ過

生物ろ過は、アンモニアを亜硝酸塩、硝酸塩と変えていくための分解をバクテリアが行うろ過です。アクアリウムのろ過においては、この生物ろ過が最も重要です。

生物ろ過では、有害物質をバクテリアが分解する
生物ろ過では、有害物質をバクテリアが分解する

アンモニアを亜硝酸に分解

アンモニアは、生物の排せつ物などの含まれていることが有名ですが、非常に有毒な物質です。(有害だからこそ、生物はアンモニアを体外に排出しています。)

水槽内には、生体が出したアンモニアが溜まっていきます。アンモニアをそのままにしていると、水槽内の生物は死んでしまいます。

水槽内の好気性バクテリアがアンモニアを亜硝酸に分解することが、生物ろ過の最初のステップです。

亜硝酸を硝酸に分解

亜硝酸はアンモニアよりは毒性が弱いですが、まだ有毒な物質です。亜硝酸はアンモニアのように直接的に身体に害があるわけではありませんが、亜硝酸が増えすぎると生物は酸素をうまく取り込めなくなり、やがて酸欠になります。

生物ろ過では、好気性バクテリアが亜硝酸をさらに硝酸という物質に分解します。

硝酸塩を植物が吸収

硝酸まで分解されると、あとは植物が吸収してくれます。

硝酸自体に有毒性はありませんが、硝酸が再び生体内に入ると、還元作用が起こり亜硝酸塩に戻ってしまいます。そのため、硝酸も水槽内においては有害な物質と言えます。

アクアリウム水槽内から硝酸をなくすためには、植物に吸収してもらうのがベストです。植物は硝酸塩を吸収し、硝酸塩と炭水化物を合成することでアミノ酸やタンパク質を生み出します。つまり、植物にとっては硝酸は重要な肥料なのです。

参考:硝酸塩の健康への影響|農林水産省硝酸塩について|農林水産省プロバイオポニックス技術による養液栽培の農産物|農林水産省

上手にろ過して水槽内のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度を維持しよう

この記事では、アクアリウムのろ過(濾過)システムの仕組である物理ろ過、化学ろ過、生物ろ過について解説してきました。

アクアリウムのろ過に置いて重要なことは、生物にとって有害な「アンモニア」を水槽内から除去することです。

アンモニアを除去するための手段として、物理ろ過、化学ろ過、そして生物ろ過の3つを活用して、アクアリウム水槽内のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度が高くなりすぎないようにしましょう!

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